売上を単価と客数に分解!今日から数字が味方になるシンプル改善術

0062 アイキャッチ 経営のヒント

頑張っているのに売上が伸びない——その原因は、実はとてもシンプルです。売上=客単価×客数。この式に当てはめるだけで、「どちらを何%動かせばいいか」「今日いくつ行動すればいいか」が見えてきます。むずかしい分析も高価なツールも不要。簡単な記録と定期的な見直しで、数字を現場の動きに変えられます。この記事では、目標の逆算→行動→記録→見直しの流れを、やさしく解説します。読み終えるころには、明日の一手が決まっています。

売上を単価×客数に分解することの3つのメリット

はじめて売上を分解するときは、シンプルに売上を「客単価」と「客数」に分解してみましょう。まずはこの2つを切り分けて、「うちは単価が弱いのか、客数が足りないのか」を見極めます。分解することで3つのメリットが得られます。

原因が分かる

売上を「客単価」と「客数」に分解し別々に見ると、単価が落ちているのか、客数が減っているのかが一目で分かります。たとえば、客単価3,100円→3,000円なら単価対策を実行します。また、客数900人→780人なら集客対策も実行しましょう。原因の切り分けが早いほど、ムダ打ちが減ります。

目標を逆算でき、「今日やる量」に落とせる

「売上=客単価×客数」に当てはめると必要な数がすぐ出ます。
必要客数=売上目標÷想定客単価、必要客単価=売上目標÷想定客数。
たとえば売上300万円、客単価3,000円なら必要客数は1,000人。営業日20日なら1日50人が目安です。単価を+100円したいなら、セット提案や上位商品の見せ方など、具体的な一手に置き換えられます。数字が“今日の行動”に変わるので、現場が動きやすくなります。

進捗管理と実行がシンプル

追う数字は「売上・客数・客単価」に、各対策の状況を示す「カギとなる数字」を1つだけ足せば十分(例:セット率、再来率など)です。毎日5分で記録し、週に一度、15分で「先週より単価が上がったか又は客数が増えたか」を確認します。効いた施策は継続し、効かなければ入れ替えます。対策会議は「数字→原因→次の一手」の順で短く進めます。「頑張る」ではなく「提案回数を1日+5回」など、誰が・いつ・何をするかが明確になり、実行が続きます。

売上を「単価×客数」に分解して経営改善する4ステップ

ここでは、売上を「単価×客数」に分解して経営改善する手順を説明します。手順をまとめると次の4ステップになります。

  • ステップ1 目標とする数字を決める
  • ステップ2 目標を達成するための対策を作成する
  • ステップ3 対策を実行し数字を記録する
  • ステップ4 改善案を実行する

この流れを毎週回すと、翌週から手応えが見えるようになります。
喫茶店の例を使って、各ステップを具体的に説明します。

ステップ1 目標とする数字を決める

まず売上を「客単価」と「客数」に分け、それぞれ目標とする数字を決めます。
前回の実績がわかれば、それをたたき台にします。

例 喫茶店の今週の目標

  • 先週の実績:客単価 600円、客数 400人(売上 24万円
  • 週の目標売上:27万円
  • 今週の目標案:客単価 650円(+50円)、客数 415人(+15人)

この場合には、売上が650円×415人=269,750円(約27万円)になります。
営業日が6日なら、1日あたり約69人が目安です。

ステップ2 目標を達成するための対策を考える

対策は「単価」と「客数」で各1つだけ実行します。各1つに絞る理由はそれぞれの対策の効果が見えやすくするためです。誰が・いつ・何を、まで具体的に決めましょう。

例 喫茶店の対策

  • 単価対策:注文時に一言提案を全員で実施(「+150円でドリンクセットにできます」)
  • 客数対策:再来のお願いメッセージを退店翌日に送付(1週間後に使える小クーポン添付)

ステップ3 対策を実行し数字を記録する

対策を実行し、その結果の数字を定期的に記録します。記録は後で分析するために必要になります。記録はエクセルを使った簡単なもので大丈夫です。忘れないように記録しやすい環境にしておきます。

  • 売上、客数、客単価(=売上÷客数)

あわせて、対策自体の状況が分かる「カギとなる数字」も対策ごとに1つ設定します。

  • 対策のカギとなる数字

例 喫茶店の記録

  • 売上:44,850円
  • 客数:69人
  • 客単価 650円(=44,850円÷69人)
  • セット率:35%
  • 再来率:20%

カギとなる数字として、単価対策はセット率(=セット注文数÷総注文数)、客数対策には再来率(=再来客数÷総来店数)を設定し、対策自体の状況を把握します。

ステップ4 改善案を実行する

先週と今週の差だけを見て、単価と客数の変化を判断します。効いた施策は継続し、効かない施策は入れ替えます。

例 喫茶店の分析と改善策

  • 客単価:640円(先週比+40円)
  • 客数:410人(先週比+10人)
  • 売上:640円×410人=262,400円(先週比+22,400円)
  • セット率: 先週30% → 今週57%(先週比+27%)
  • 再来率: 先週20%→今週22%(先週比+2

この結果を分解してみると何が効いたか判断できます。

  • 単価効果=(640円−600円)×400人=+16,000円
  • 客数効果=(410円−400円)×600人=+6,000円
  • 掛け合わせ効果=40円×10人=+400円

→ セット率の変化と単価効果をみると、単価対策が有効だったと判断できる。一方、再来率の変化と客数効果をみると、客数対策はあまり有効でなかったと判断できる。

分析の結果を受けて次週は次の改善案を実行することにしました。

  • 単価対策は継続する:一言提案の言い回しをカード化し新人にも共有する
  • 客数対策は見直しする:再来メッセージの内容をA/Bテスト(100円引き vs ドリンク無料)で反応が高い方に寄せる

実践にあたってよくあるつまずき

実践するにあたって、よくあるつまずきをまとめました。

0060 具体的な行動 0059 ヒント 0061 ポイント
0062 つまづき

数字が増えすぎる

現場にはたくさんの数字が飛び交います。そのため、気づくと表が数字だらけになり、入力も会議も重くなります。対策はシンプルに「最初に決めた数字だけ追う」を徹底しましょう。どうしても増やしたい場合は、1か月続けた後に1つだけ追加します。それでも、見直しの時間が大きく増えるのであれば元に戻します。

施策を同時にやりすぎる

単価も客数も一気にテコ入れしたくなりますが、同時にいくつもの対策を講じても何が効いたのか分からなくなります。対策は「常に最大2つ」。単価系1つ(例:おすすめ一言トークの統一)、客数系1つ(例:既存客10件に連絡)だけに絞ります。来週の会議で入れ替えれば十分です。

記録が後回しになる

忙しいと日々の数字の記録を忘れてしまいます。対策は、どんなに忙しくても特定の時間に記録するルールを決めておき習慣化することです。例えば、閉店作業に「数字の記入」を追加しましょう。また、PCが難しければ紙で記録でもOKです。すぐに記入できる環境を整えておきましょう。

単価アップで客数の減少を放置

セットの訴求で単価は上がったが、客数が落ちる――よくある副作用です。毎週の見直しで「単価効果」と「客数効果」に分けて確認します。たとえば先週より売上はアップだが、客数はダウンなら、提案の言い回しを柔らかくする・ピーク帯は先会計で回転を守る、など副作用対策を同時に打ちましょう。

売上だけをみて利益をみていない

「売上が伸びたから良い経営だ」とは限りません。値引きや広告強化で売上は増えても、仕入や外注などの変動費が膨らみ、粗利が縮むことがあります。固定費やキャンペーンの追加作業が利益を圧迫することもあります。必ず売上と合わせて、粗利=売上−変動費、粗利率=粗利÷売上、営業利益を確認します。単価・原価率・数量を同時に設計し、週次で粗利の推移を点検します。そうすることで薄利多売や効果の薄い施策を早めに止められます。

まとめ

売上は「客単価×客数」。むずかしい分析より、まずはこの2つを分けて“どちらが弱いか”を見るところから始めましょう。目標は式に当てて逆算し、今日やる量に落とし込みます。記録は〈売上・客数・客単価+カギとなる数字(例:セット率/再来率)〉だけでOK。週15分の見直しで「数字→理由→次の一手」をサッと決め、効いたら継続、効かなければ入れ替えます。たとえば喫茶店なら、注文時の一言提案や退店翌日のひと声で単価・客数は着実に変わります。「自社だと何を測ればいい?」と迷ったら、当事務所にお気軽にご相談ください。