創業から数年が経ち、年商も2,000万円を超えて事業が軌道に乗ってきた。本業に追われる日々の中、ふと「そろそろ新しい設備を導入したい」「優秀な人材を採用して、事業をもう一段階スケールアップさせたい」と考える瞬間はありませんか?
売上は順調に伸びてきたものの、手元の自己資金だけで大きな投資に踏み切るのは少し不安。かといって、民間の銀行融資はハードルが高そうに感じたり、そもそもどこに相談すれば良いのか分からなかったり……。
「日本政策金融公庫」という名前は耳にしたことがあるけれど、「うちのような小規模な事業でも使えるのだろうか?」「手続きが面倒くさそう…」と、後回しにしてしまっている経営者様も少なくないようです。
特に、創業1~5年目の経営者様は、ご自身がプレイヤーとして現場の最前線に立ちながら、経理や資金繰りの管理まで担っているケースが非常に多いです。本業が多忙で、経理作業が苦手、数字の管理まで手が回らない、というお悩みも痛いほどよく分かります。
この記事では、まさにそんな創業期を抜け出し、成長期への一歩を踏み出そうとしている経営者様・個人事業主様に向けて、
- 「日本政策金融公庫」がどのような金融機関なのか
- なぜ創業期・成長期の事業にとって「強い味方」になるのか
- 「経理が苦手」「時間がない」方でも、税理士がどうサポートできるのか
といった点を、分かりやすく解説します。
単なる融資の申し込み方法だけでなく、融資を受けた「後」の経営安定こそが重要であるという視点から、私たち税理士が提供できる「数字を使った経営アドバイス」の価値についても具体的にお伝えします。
この記事が、あなたの事業をさらに飛躍させるための「資金」と「安心」を得るための一助となれば幸いです。
なぜ今「公庫」を知らないと損なのか? 成長期の経営者が直面する資金調達の壁
事業が成長軌道に乗り、年商が2,000万円から5,000万円規模になってくると、創業当初とはまた違った「資金」に関する悩みが出てきます。
創業1~5年目によくある「資金調達の悩み」
あなたは、こんなことで悩んでいませんか?
- 売上は立つのに、なぜか手元の現金が心もとない売上規模が大きくなると、仕入れの額も増えます。また、取引先からの入金サイクルによっては、売上が立ってから実際に入金されるまでに数ヶ月のタイムラグが生じます。いわゆる「黒字倒産」のリスクは、売上が伸びている時期にこそ高まるのです。
- 「チャンス」を掴むための投資ができない「今、この設備を導入すれば生産性が倍になる」「ここに広告を出せば、一気に新規顧客が獲得できる」といったビジネスチャンスが見えていても、手元の資金が足りないために決断できず、機会を逃してしまうことがあります。
- 民間の銀行に相談したが、良い反応が得られなかった創業から5年未満、あるいは担保となる不動産を持っていない場合、民間の金融機関からは「もう少し実績を積んでから」「保証人を立ててほしい」と、慎重な姿勢を示されることも少なくありません。彼らが重視するのは、どうしても「過去の実績」や「担保力」になりがちです。
「日本政策金融公庫」を知らないことの重大なリスク
こうした悩みがあるにもかかわらず、「日本政策金融公庫(以下、公庫)」という選択肢を知らない、あるいは「自分には関係ない」と活用しないでいることには、想像以上に大きなリスクが伴います。
1. 絶好の「機会損失」
公庫は、まさに上記のような「創業期・成長期で、民間金融機関ではサポートが難しい事業者」を支援するために設立された政府系の金融機関です。
もし、あなたが公庫の利用対象であるにもかかわらず、それを知らずに「自己資金が貯まるまで待とう」と判断しているとしたら、それは事業成長のスピードを自ら遅らせていることになります。競合他社が公庫をうまく活用して設備投資を進めている間に、あなたの会社は大きな差をつけられてしまうかもしれません。
2. 高金利な資金調達に手を出してしまう危険性
資金が必要な時、公庫という選択肢を知らないと、手軽に借りられる「ビジネスローン」や「カードローン」に頼ってしまうケースがあります。これらは審査が早い反面、金利が非常に高く設定されていることがほとんどです。
一時的に資金を確保できても、その後の返済負担が経営を重く圧迫し、かえって資金繰りを悪化させる原因になりかねません。
3. 「金融機関との信用実績」を作るチャンスを逃す
事業を継続的に成長させていくためには、将来的に公庫だけでなく、民間の金融機関とも良好な関係を築いていく必要があります。
金融機関が最も重視することの一つが、「融資を行い、きちんと期限通りに返済してもらった」という「信用実績」です。
創業期に公庫から融資を受け、堅実に返済を続けることは、あなたの事業の「信用」を育てることにも直結します。この実績作りが遅れると、将来さらに大きな融資を受けたい時に不利になる可能性があります。
なぜ「知ってはいるけど、利用しない」のか?
「名前は知っているけれど、一歩が踏み出せない」という経営者様もいらっしゃいます。
- 「手続きがとにかく難しそう…」
- 「『事業計画書』なんて、どうやって書けばいいか分からない」
- 「本業が忙しすぎて、そんな書類を準備する時間がない」
- 「面談でうまく説明できる自信がない」
経理業務や数字の管理が苦手だと感じている方にとって、融資の申し込みは非常にハードルが高く感じられるものです。そのお気持ちは、私たち税理士も日々多くのお客様から伺っており、よく理解できます。
しかし、その「ハードル」は、専門家である税理士がサポートすることで、大幅に下げることが可能です。次の章では、公庫とは具体的にどのような機関で、税理士がどうお手伝いできるのかを解説します。
「日本政策金融公庫」とは? 創業期・成長期の経営者のための金融機関
前章では、公庫を知らないことのリスクをお伝えしました。では、その「公庫」とは一体どのような金融機関なのでしょうか。経理が苦手な方にも分かりやすく、ポイントを絞って解説します。
【ご留意ください】 本記事の制度・利率・返済条件は、日本政策金融公庫の公表内容(2025年10月時点)に基づいていますが、改定されることがあります。ご利用可否や利率特例、代表者保証の要否は個別審査と要件充足により異なります。
公庫は「中小零細企業の味方」である政府系金融機関
日本政策金融公庫は、100%政府が出資している金融機関です。
なぜ国が金融機関を運営しているのか? それは、民間の金融機関(銀行や信用金庫など)では対応が難しい分野をサポートするためです。
その「対応が難しい分野」の代表格が、「創業間もない事業者」や「小規模な事業者(中小零細企業、個人事業主)」への融資です。
民間の銀行は、預金者から預かった大切なお金を貸し出すため、どうしても「返済の確実性」=「過去の実績」や「担保力」を重視します。
しかし、創業1~5年目の事業者は、まだ十分な実績がなかったり、担保に入れる資産を持っていなかったりすることがほとんどです。だからといって、そうした事業者に一切お金が流れなければ、新しいビジネスやイノベーションは育ちません。
そこで公庫が、「国の政策」として、事業の「将来性」や「計画の妥当性」を評価し、積極的に資金を供給する役割を担っているのです。
なぜ創業1~5年目の経営者に「公庫」がおすすめなのか?
公庫には様々な融資制度がありますが、創業期・成長期の経営者様にとって、特に大きなメリットが4つあります。
1. 原則「無担保・無保証人」で利用が可能
創業初期(おおむね税務申告を2期終えるまで)の方は、原則として無担保・無保証人で利用が可能です(ただし、最終的には審査により異なります)。
創業初期以外の貸付においては必要に応じて「経営者保証免除特例制度」の適用ができれば、経営者保障を外せる可能性がありますので、経営者様個人が借金を背負うリスクを軽減できます(適用時は利率が上乗せされる等の要件があります)
2. 基準利率からの「利率引下げ特例」がある
公庫の基準利率が適用されますが、創業期向けの特例として、利率の引下げ措置が用意されている場合があります。
例えば「新規開業・スタートアップ支援資金」において、一定の要件(創業支援貸付利率特例制度)を満たすと、基準利率から原則0.65%、特定の雇用拡大を伴う場合は0.9%の利率引下げが適用されるなど、返済負担を抑えられる可能性があります。
3. 比較的、長期の返済期間が設定されている
事業が軌道に乗るまでには時間がかかります。公庫の融資制度、例えば「新規開業・スタートアップ支援資金」では、運転資金は10年以内(うち据置期間5年以内)、設備資金は20年以内(うち据置期間5年以内)といった、長期の返済期間が設定可能です。※制度・資金使途・審査により実際の条件は異なります
「据置期間」とは、利息だけの支払いで元金の返済が不要な期間のことで、創業初期のキャッシュフローを安定させるのに非常に有効です。
4. 「将来性」を計画書で審査してくれる
公庫の審査で最も重要視されることの一つが、「過去の実績」だけでなく「未来の計画」です。
その「未来の計画」の妥当性や実現可能性を判断する材料が、提出が求められる「創業計画書(事業計画書)」です。
「どのような事業で、どれくらいの売上や利益が見込めて、借りたお金をどう使い、どうやって返済していくのか」
この計画に説得力があれば、たとえ直近の決算が赤字であったり、実績が浅かったりしても、融資を受けられる可能性は十分にあります。
税理士が「経理が苦手」「時間がない」をこうサポートします
とはいえ、やはり最大のネックは「事業計画書の作成」や「手続きの煩雑さ」ですよね。 ここで税理士の出番です。私たちは「申告書を作るだけ」の存在ではありません。
「融資の可能性を高める」事業計画書の作成を一緒にサポート
経営者様の「想い」や「ビジネスプラン」は、そのままでは審査担当者には伝わりません。私たちは、その想いを「数字」に落とし込みます。
「経理が苦手」な方でもご安心ください。日々の会計データや過去の実績に基づき、「なぜこの売上目標が達成可能なのか」「経費はこのくらいかかるはずだ」という根拠のある収支計画の作成をお手伝いします。これは、単なる作文代行ではなく、経営者様と一緒に未来の計画を練り上げる作業です。
面談に必要な決算書や試算表などの会計書類は、顧問税理士がいればスムーズに準備できます。また、「面談で何を聞かれるか不安だ」という方には、想定される質問への回答を一緒に準備します。
「時間がない」「苦手だ」と感じる部分は専門家に任せて、経営者様は「ご自身の事業の強みや未来を語る」という、最も重要な部分に集中していただく。それが、税理士を活用する最大のメリットの一つです。
融資はゴールではない。税理士と描く「資金繰りに困らない」未来
無事に公庫から融資が下りた。これで一安心…ではありません。 経営者の皆様が本当に求めているのは、「融資を受けること」自体ではなく、「融資で得た資金を活用して事業を成長させ、将来にわたって資金繰りに困らない安定した経営を実現すること」のはずです。
私たちが考える「パートナー」としての税理士の価値は、融資の申し込みをサポートすること以上に、この「融資を受けた後」のサポートにあると、私たちは考えています。

融資後にありがちな「落とし穴」
公庫からまとまった資金が入金されると、つい気が大きくなってしまうことがあります。
- どんぶり勘定に戻ってしまう
融資前は必死で資金繰りを考えていたのに、通帳にまとまった残高があると安心してしまい、日々の数字の管理が疎かになる。 - 返済計画が甘かった
融資の返済は、数ヶ月後から始まります。利益が出ていても、返済額を考慮したキャッシュフローを管理していないと、返済が始まった途端に資金繰りが苦しくなる。 - 借りたお金の「使い方」を間違える
融資は、申請した「資金使途(例:設備投資、運転資金)」に沿って使用することが厳格に求められます。本来は「設備投資」のために借りたお金を、計画外の用途に使ってしまうと、後の調査などで問題になる場合があります。また、支払ったことを証明する見積書、請求書、領収書といった証憑(しょうひょう)類の保存も必須です。
これらはすべて、創業1~5年目の経営者様が陥りがちな罠です。
「数字を使った経営アドバイス」が未来を変える
私たちが提供したいのは、単なる「記帳代行」や「申告代行」ではありません。経営者様の「数字に強いパートナー」として、以下のようなサポートを提供します。
1. 「資金繰り表」で未来のお金の流れを見える化します
経理が苦手な方でも一目で分かるように、公庫からの返済額を含めた、今後1年間の「お金の出入り(キャッシュフロー)」を予測する表(資金繰り表)を作成します。
これにより、「3ヶ月後に資金がショートしそうだ」といった危険を事前に察知し、先手を打つことができます。
2. 毎月の「数字」に基づいた、具体的なアドバイス
毎月お渡しする試算表(会社の成績表のようなもの)を基に、「売上は計画通りですが、広告宣伝費が少し増えすぎていますね」「このままいくと、納税はこれくらい必要になりそうです」「この投資は、いつ頃から利益に結びつきそうですか?」といった、タイムリーな経営アドバイスを行います。
高圧的に指摘するのではなく、温和な性格のあなたに寄り添い、一緒に「どうすれば良くなるか」を考えるパートナーとして伴走します。
3. 「次の融資」と「節税」の最適なバランスをご提案
事業がさらに成長すれば、公庫だけでなく、民間の金融機関との取引も始まります。日頃から正確な会計処理を行い、良好な財務状態を維持することで、次の融資(追加融資や、より条件の良い民間融資への切り替え)が成功する確率も格段に上がります。
また、利益が出た際には、「どれくらい税金を納めるか」「どれくらい役員報酬として受け取るか」「どれくらい次の投資に回すか」という最適なバランスを、あなたの事業計画に合わせて一緒に考えます。
税理士は、「過去の数字」をまとめるためだけにいるのではありません。
「未来の数字」を良くするために、経営者様の「数字に関する不安」を取り除き、本業に集中できる環境を整えること。それこそが、経営者様が求める「経営アドバイス」の核心だと考えています。
事業成長のパートナーとして、まずはご相談ください
この記事では、創業1~5年目で、これから事業をさらに成長させたいとお考えの経営者様・個人事業主様に向けて、「日本政策金融公庫」の重要性と、税理士のサポート活用法について解説しました。
【ご留意ください】 本記事の制度・利率・返済条件は、日本政策金融公庫の公表内容(2025年10月時点)に基づいていますが、改定されることがあります。ご利用可否や利率特例、代表者保証の要否は個別審査と要件充足により異なります。
【記事のポイント】
- 公庫は強い味方: 公庫は、創業期・成長期の事業者を支援する政府系金融機関です。「新規開業・スタートアップ支援資金」など、創業者に有利な制度があります。
- 条件を確認しよう: 創業初期は「原則、無担保・無保証人」で利用できる可能性があります。また、利率の引下げ特例や長期の返済期間(据置期間含む)も魅力です。
- 手続きの不安は税理士がサポート: 「経理が苦手」「時間がない」方でも、税理士が「事業計画書」の作成や手続きを強力にサポートし、本業に集中できます。
- 重要なのは「借りた後」: 融資はゴールではありません。資金使途を守り、証憑を保存することが重要です。税理士は、融資後の資金繰り管理や経営アドバイスを通じて、あなたの事業が安定的に成長する未来を「数字の面」からサポートします。
もし、あなたが数字に関するお悩みや、資金調達に関する不安を少しでも抱えていらっしゃるなら、一人で抱え込まずに、まずは専門家である私たちにご相談ください。
私たちは、あなたの事業成長を数字の面からサポートするパートナーです。
当事務所では、経営者様・個人事業主様のそうしたお悩みに寄り添うため、「初回無料相談」を実施しております。経理のお悩みから具体的な経営アドバイスまで、幅広くサポートいたします。
あなたの事業の未来を一緒に描くパートナーとして、お話をお伺いできることを楽しみにしております。まずはお気軽にお問い合わせください。

