創業から数年が経ち、お客様が増え、売上が2,000万円、3,000万円と
順調に伸びてくるのは本当に喜ばしいことです。
しかし、その一方で「通帳の残高はなんとなく把握しているけれど、
毎月の細かい数字までは見きれていない」という状況になってはいませんでしょうか。
そんな多忙な日々の中で、ついつい後回しになりがちなのが、ご自身の会社の「数字の確認」です。
税理士事務所から届く試算表を見ても、数字が並んでいるだけでどこを見ればいいのか分からなかったり、
銀行や税務署のために渋々作成していると感じてしまったりすることもあるかもしれません。
「数字を見るのは苦手だし、本業が忙しくてそれどころではない」
「税理士に任せているから、決算の時にまとめて聞けばいい」
そのお気持ち、痛いほどよく分かります。
現場に出ている経営者様にとって、数字の羅列である「試算表(しさんひょう)」と
向き合う時間は、なかなか確保しづらいものです。
しかし、経営の視点から申し上げますと、年商が数千万円規模になった今こそ、
毎月の「試算表」をチェックする習慣を持つことが、
会社を黒字にし続け、あなた自身の手元にお金を残すための最短ルートなのです。
この記事では、忙しいあなたのために、経営者として
「試算表のどこを、何のために見ているのか」
というポイントを絞って解説します。
難しい簿記の知識は必要ありません。この記事を読み終える頃には、
毎月の数字を見ることが「面倒な作業」から「経営を楽にする強力な武器」へと
変わっているはずです。
どんぶり勘定が招く3つの落とし穴
多くの経営者様とお話ししていると、
数字のチェックが後回しになってしまう理由がよく分かります。
現場の仕事だけでなく、スタッフの育成や取引先との交渉など、
経営者にしかできない仕事が山積みになるからです。
試算表のチェックは直接売上を生むわけではないため、
どうしても優先順位が下がってしまいます。
しかし、試算表を見ずに経営を続けることは、
暗闇のなか懐中電灯をつけずに運転するような怖さがあります。
ここでは、試算表を見ずに経営するどんぶり勘定が具体的にどのようなリスクが生じるのか、
3つのポイントに整理してお伝えします。

銀行残高だけで判断する怖さ
毎日の資金繰りを確認する際、スマートフォンの銀行アプリで残高をチェックするだけ、
という方は意外と多いのではないでしょうか。
確かにお金がいくらあるかを知ることは大切ですが、
銀行の残高はあくまで「現時点での結果」に過ぎません。
試算表を毎月確認していないと、
以下のような見えない支払いの存在を忘れてしまいがちです。
・数ヶ月後にまとめてやってくる消費税や法人税の支払い
・これから引き落とされる予定のクレジットカード決済代金
・借入金の元本返済(これは損益計算書上の経費にはなりません)
例えば、通帳に500万円の残高があったとしても、
翌月に400万円の納税と借入返済が控えていれば、
自由に使えるお金はほとんど残っていないことになります。
残高だけを見て「まだ余裕があるから新しい設備を買おう」と判断してしまうと、
いざ支払いの時期になって慌てて資金を工面することになりかねません。
利益が出ているのにお金がない「黒字倒産」の予兆
事業が順調で売上が伸びている時期ほど、
特に注意が必要なのがキャッシュフローの問題です。
会計上の「利益」と、手元にある「現金」は、必ずしも一致しません。
特に個人事業主や中小企業の経営において、以下の状況は非常に危険です。
・売上は立っているが、取引先からの入金が数ヶ月先になる
・在庫を多く抱えすぎてしまい、現金が商品に姿を変えて眠っている
・利益は出ているのに、借入金の返済額がそれを上回っている
これらは試算表(貸借対照表と損益計算書)をセットで見ることではじめて把握できるものです。
利益が出ていることに安心してしまい、現金の動きを軽視していると、
ある日突然「支払いのための現金が足りない」という事態に陥ります。
これが、いわゆる黒字倒産のメカニズムです。
数字を毎月確認していれば、
「今月は売掛金が増えているから、入金を早めてもらう交渉をしよう」
といった対策を事前に打つことができます。
適切な投資タイミングを逃し、成長のチャンスを損なう
リスクは「お金がなくなること」だけではありません。
「適切なタイミングで投資ができないこと」も、
経営における大きなリスクです。
コンプライアンス意識が高く、真面目な経営者様ほど、
「もっとお金を貯めてからでないと新しいことはできない」と
慎重になりすぎてしまう傾向があります。
しかし、ビジネスには旬があります。
新しい機材を入れる、新しいスタッフを雇用する、広告を出すといった投資は、
タイミングが何より重要です。
試算表で自社の収益力と資金の余力を正確に把握できていないと、
以下のような思考に陥りやすくなります。
・なんとなく不安だから、今は投資をやめておこう
・お金に余裕がある気がするから、勢いで高い車を買ってしまおう
これらはどちらも感情に基づいた判断であり、数字に基づいた経営判断ではありません。
もし試算表から「現在の利益水準なら、あと300万円までの投資は半年以内に回収できる」
という根拠が見えていれば、自信を持って攻めの経営ができるようになります。
逆に、数字を把握していないがゆえの「なんとなくの不安」は、
経営者の決断力を鈍らせ、本来得られたはずの成長チャンスを
逃すことにつながってしまうのです。
試算表について知りたい方はこちらをご参照ください

経営判断に必要な3つの重要チェック項目
試算表にはたくさんの数字が並んでいますが、そのすべてを完璧に理解する必要はありません。
経営者様がまず向き合うべきは、会社の健康状態を左右する「3つのチェックポイント」です。
実務に追われる中で、短時間で本質を掴むための具体的なチェックポイントを見ていきましょう。

売上総利益(粗利)の推移:ビジネスモデルの健康状態を知る
まず、何よりも先に確認していただきたいのが「売上総利益」です。
一般的には「粗利(あらり)」と呼ばれるもので、
売上高から仕入れや外注費などの直接的な原価を差し引いた金額を指します。
なぜ売上が一番ではないのでしょうか。
それは、売上が増えていても、この粗利が減っている場合は
ビジネスモデル自体に無理が生じている可能性が高いからです。
経営の視点では、以下のポイントを確認します。
・粗利率(売上に対する粗利の割合)が先月や昨年と比べて下がっていないか
・仕入れ価格の高騰を販売価格に適切に転嫁できているか
・値引き販売が常態化して、現場が疲弊していないか
もし、売上は伸びているのに粗利率が下がっているなら、
それは「忙しいのに利益が残らない」という危険なサインです。
その場合は、売上をさらに追うのではなく、
まずは原価の見直しや価格設定の適正化を優先する必要があります。
固定費のバランス:会社の体力を削っている無駄を見つける
次に注目するのが、売上の増減に関わらず毎月発生する「固定費」です。
人件費、家賃、水道光熱費、リース料、そして最近増えているサブスクリプション型の
サービス利用料などがこれに当たります。
経営において、固定費は「会社が息をしているだけでかかるコスト」です。
年商2,000万〜5,000万円規模の段階では、
一度増えてしまった固定費を削るのは非常に骨が折れます。
ここでチェックすべきは、以下の2点です。
・人件費に見合った付加価値(粗利)を生み出せているか
・「なんとなく」払い続けている月額サービスや会費はないか
特に、創業から数年経つと、当初は必要だったツールや広告が、
今の事業フェーズでは不要になっていることがよくあります。
試算表の「販売費及び一般管理費」の項目を上から眺め、
金額の大きなものから「これは今の売上に貢献しているか?」
と自問自答してみてください。
固定費をスリムに保つことは、不況時の耐性を作るだけでなく、
攻めたい時にいつでも投資ができる「身軽さ」を維持することにつながります。
資金繰り:本業でお金が回っているかを確認する
3つ目は、少し応用編になりますが非常に重要な「お金の回り方」です。
損益計算書で利益が出ていても、手元の現金が増えていなければ意味がありません。
難しい計算は抜きにして、簡易的に以下の数字を比較してみてください。
・今月の利益 + 減価償却費 > 借入金の元本返済額
「今月の利益 + 減価償却費」は簡易的に計算した資金の収支です。
この数式が成り立っていれば、本業の儲けの範囲内で借金を返せていることになり、
資金は減らずに経営が安定していることを意味します。
逆にこの数式が成り立っていないと、本業の儲けよりも借金の返済額が多いため
資金がどんどん減っていってしまうことになります。
経営者としての判断基準は、「利益は意見、キャッシュは事実」という言葉に集約されます。
試算表を見るときは、常に「この利益は、いつ現金として手元に入ってくるのか」
という視点を忘れないようにしましょう。
数字が苦手な人でも実践できる、簡単な比較のコツ
数字を読み解くのが苦痛だという方は、単月の数字だけを見ようとするからかもしれません。
数字は「点」ではなく「線」で見ると、驚くほど分かりやすくなります。
おすすめは、以下の2つの比較です。
・前月比較:先月と比べて、何が良くなって何が悪くなったか
・前年同月比較:去年の今頃と比べて、会社はどれくらい成長したか
特に前年同月との比較は、季節変動があるビジネスにおいて非常に有効です。
「去年より売上は10%増えているのに、利益が5%減っているのはなぜだろう?」
という違和感こそが、経営改善の第一歩になります。
表計算ソフトで複雑な分析をする必要はありません。
税理士から届く試算表の横に、前月の数字を並べて眺めるだけで十分です。
違和感に気づくことができれば、
そこから専門家である税理士に具体的な質問を投げかけることができます。
下記のような形式の試算表を見ると検討しやすいでしょう。

経営者としての判断基準
最後に、経験豊富な経営者が数字を見てどのような判断を下すか、
その思考回路を共有します。
プロは数字を「良い・悪い」で判断するだけでなく、「次のアクション」に繋げます。
例えば、広告費が増えて利益が減っていたとしても、
それが「新規顧客を獲得するための戦略的な投資」であり、
実際に問い合わせ数が増えているのであれば、
それは「良い赤字(あるいは利益減)」と判断します。
逆に、何も対策をしていないのにじわじわと外注費や消耗品費が増えている場合は、
管理体制の緩みとして警鐘を鳴らします。
試算表をチェックする目的は、過去を反省することではありません。
「このままのペースで進んで大丈夫か?」
「今、アクセルを踏むべきか、ブレーキをかけるべきか?」
という未来の決断を下すために、数字という客観的な事実を使うのです。
数字が「見える」と未来が変わる。税理士を経営のパートナーにするメリット
ここまで試算表の重要性をお伝えしてきましたが、
「理屈は分かっても、やはり数字と向き合うのは孤独でエネルギーが必要だ」
と感じる経営者様もいらっしゃるかもしれません。
年商が2,000万円を超え、さらなる成長を目指すフェーズにおいては、
社長お一人で数字のすべてを抱え込む必要はありません。
ここで重要になるのが、税理士を「記帳代行の業者」ではなく、
客観的なデータに基づいて対話ができる「経営のパートナー」として活用することです。
税理士を上手に活用することで、事業の未来がどのように変わるのか、
具体的なメリットをご紹介します。

作業代行の先にある、資金繰りの安心感
多くの経営者様が税理士に求めているのは、正確な決算書の作成や申告業務かもしれません。
もちろんそれも大切ですが、本当に価値があるのは、試算表から読み取れる
「少し先の未来の予測」です。
例えば、毎月しっかりと数字を共有できていれば、
税理士は「このままのペースでいくと、
半年後には手元の資金が心もとなくなるかもしれません。
今のうちに銀行に融資の相談をしておきませんか?」といった提案ができるようになります。
資金が底をつきそうになってから慌てて銀行へ行くのと、
試算表をもとに余裕を持って相談に行くのとでは、
銀行からの信頼度も、融資の実行率も大きく変わります。
数字をプロと一緒に見ることで、経営者様は「いつお金がなくなるか分からない」
という漠然とした不安から解放され、安心して本業に打ち込めるようになります。
節税と投資判断のバランスを最適化する
コンプライアンス意識の高い経営者様ほど、
「正しく納税しつつ、無駄な税金は抑えたい」と考えます。
しかし、過度な節税対策は、時に会社の現金を減らし、
成長を阻害してしまうこともあります。
経営コンサルティングの視点を持つ税理士であれば、
単に「経費を増やして税金を減らしましょう」という提案だけでなく、
次のようなアドバイスが可能です。
・この利益を納税に回すのと、将来のために設備投資に回すのとでは、
どちらが3年後の利益に貢献するか
・今、無理に節税をして現金を減らすよりも、納税して自己資本を厚くし、
銀行の格付けを上げた方が将来の大きな融資に有利ではないか
このように、節税という近視眼的な視点だけでなく、
事業成長という長期的な視点での投資判断をサポートしてもらえるようになります。
孤独な経営判断に「客観的な根拠」という味方を
経営者は常に孤独な決断を迫られます。
新しい事業を始める時、人を雇う時、大きな契約を結ぶ時。
周囲に相談できる相手がいない中で、最終的な判断を下すのは社長ご自身です。
その際、税理士との月次面談は、自分の考えを整理し、
客観的な視点を取り入れる貴重な機会となります。
「社長の今のアイデアを数字に落とし込むと、これくらいの利益率になりますね」
「過去の傾向から見ると、この時期は固定費が膨らみやすいので注意しましょう」
といった対話は、経営判断の精度を飛躍的に高めます。
試算表という共通の言語を使って、社外の専門家と毎月定例で対話する時間を持つこと。
それ自体が、経営者様のメンタルを安定させ、
健全な経営を続けるための強力な仕組みになります。
税理士を「過去を報告する相手」から「未来を創るパートナー」へと変えることで、
あなたの会社はより力強く、着実に成長していくことができるはずです。
試算表は会社を守り、成長させるための航海図
日々の忙しさの中で、数字と向き合う時間を作るのは大変なことかもしれません。
しかし、試算表を確認することは、決して「やらなければならない苦行」ではありません。
むしろ、毎日頑張っている経営者様の努力がどのような結果に結びついているのか、
そして会社をさらに良くするためのヒントがどこにあるのかを教えてくれる、心強い味方です。
最初は難しく感じるかもしれませんが、
まずは今回ご紹介した「売上総利益(粗利)」「固定費」「資金繰り」の3つを眺めることから始めてみてください。
数字が少しずつ「見える」ようになると、経営の迷いが消え、
進むべき道がはっきりと見えてくるはずです。
数字を味方につけて、より健全で、より希望に満ちた経営を一緒に目指していきましょう。
初回無料相談のご案内
私たちの事務所では、単なる税金計算や申告書の作成だけでなく、
経営者様が抱える「数字の悩み」に寄り添い、
共に解決策を考えるパートナーでありたいと考えています。
「今の経営状態を客観的に分析してほしい」
「試算表のどこを見れば資金繰りが楽になるのか教えてほしい」
「これからの投資判断にアドバイスがほしい」
このようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度お話しをお聞かせください。
まずは初回無料の個別相談にて、あなたの会社の現状を整理し、
未来に向けた最初の一歩をサポートさせていただきます。
温和な雰囲気の中で、分かりやすい言葉を選んでお伝えしますので、
数字が苦手な方も安心してお申し込みください。
あなたの事業がより大きく成長していくお手伝いができることを、
心より楽しみにしております。

