仕事で公共交通機関を使って移動する際には、券売機で切符を購入せずに交通系ICカードのSuicaを利用することがほとんどだと思います。Suicaを利用した方が移動には効率的ですが、 経理業務においてもSuicaを利用した方が効率的になります。
この記事では交通系ICカードのSuicaを利用した場合の交通費の取り扱いについて説明します。
メリット
公共交通機関をSuicaを使って利用した場合のメリットについて説明します。
Suicaの利用履歴が税務署に対する証明書類になる
Suicaの利用履歴がそのまま税務署に対する証明書類となります。
事業者は、経費にかかわる請求書や領収書といった書類を一定期間保存しておく必要があります。
そして、税務調査の際にその書類を調査官に提示し、その経費が実際に存在するものであることを証明します。
現金で切符を購入した場合は、切符ごとに領収書を発行する必要があります。いちいち発行に手間がかかる上に、領収書の枚数が多くなるため保管の手間もかかってしまいます。その点、Suicaを利用している場合には、券売機で利用履歴を発行することができますし、特にモバイルSuicaを利用している場合には、スマホやPCから直接、利用履歴を入手することができます。利用履歴が税務署に対する証明書類となるため、手間が省けます。
JR東日本:モバイルSuica>モバイルSuicaをはじめる (jreast.co.jp)
下の画像は実際の利用履歴です。日付、利用区間、運賃が表示されているため証明書類として活用できます。
データ連携で記帳の手間が省ける
モバイルSuicaを利用して、利用履歴をデータで取得することができれば、マネーフォワードといった会計ソフトのデータ連携を使って自動で記帳することができます。現金で切符を購入していた場合には、一件ずつ手入力で領収書を見て記帳するため非常に手間がかかります。しかし、データにより利用履歴を入手できれば、入力作業が効率化できます。
下の画面はマネーフォワードにてデータ連携を行ったものです。
経理処理
ここでは、Suicaを利用した場合の一連の経理処理について説明します。
①Suicaにチャージする
例 券売機でSuicaにお金を1万円チャージした
(借方)預け金 10,000円 (貸方)現預金 10,000円
Suicaにお金をチャージした段階では電子マネーに両替しただけのため、
経費にはなりません。
②仕事で電車に乗ったとき
例 仕事でSuicaを使って電車移動した(料金260円)
(借方) 交通費 260円 (貸方)預け金 260円
実際に交通機関を利用して初めて経費になります。
③仕事と関係のないプライベートで電車に乗ったとき
例 休日にSuicaを使って電車移動した(料金260円)
(借方)立替金 260円 (貸方)預け金 260円
仕事とは関係のない場合には経費にはなりません。
後日、会社に返金する必要があるため立替金として処理します。
インボイスとの関係
インボイス制度の開始に伴い、インボイス(適格請求書)を取得しないと消費税の計算上経費として認められなくなりました。つまり、インボイスが無いと消費税の計算上考慮されないため消費税の負担が増えてしまいます。
インボイスは相手事業者のインボイス登録番号や消費税額といった一定の事項が記載されている必要があり、Suicaの利用履歴はこれらの記載がないためはインボイスには該当しません。
しかし、インボイス制度のなかで、公共交通機関を利用した場合の特例が設けられており、一取引当たり税込み3万円未満であれば、一定の事項を記載した帳簿の保存を条件に消費税の計算上経費として取扱うことが認められました。
したがって、日常的に発生する電車での移動であれば、一取引が3万円未満となることがほとんどのため特例の適用によりインボイスがなくても消費税の計算上経費として取扱うことができます。
一取引が3万円以上となる場合には特例の適用はできないため、通常通りインボイスを取得し保管する必要があります。
また、特例に規定する公共交通機関は、鉄道、バス及び船舶と規定されており、タクシーや飛行機は該当しないのでインボイスを取得しておきましょう。
交通費にSuicaを活用する際の注意点
交通費にSuicaを活用する際の注意点をまとめました。
・Suicaを利用する際には仕事用と私用は分ける
Suicaを利用する際には仕事専用のものを用意しましょう。Suicaは便利なので私用でも使うことが多いと思いますが、仕事用と私用で兼用していると後で記帳する際に選り分けが大変になり、経理の効率化の邪魔になります。また、私用の分を経費に計上してしまい、税務調査の際に指摘が入る可能性もあります。
・利用履歴の閲覧期間に気を付ける
Suicaの場合、26週以内かつ最大100件までしか確認できないとのことです。
こまめに利用履歴は保存しておきましょう。
・公共交通費以外の利用は別途領収書を保管する
Suicaは公共交通機関の支払いだけでなくコンビニエンスストア等でも利用できます。その際に利用明細には、「物販」と記載されるだけでその内容が不明確のため証票書類としては不十分であり、税務調査の際に指摘される可能性があります。そのため、Suicaを使って何か購入した際には、レシートや領収書を入手し内容が分かるように保管しておきましょう。この場合の経理上の注意点として、一つの取引について利用履歴とレシートと二つの会計資料が生じてしまうため二重に経費計上しないように注意しましょう。もしくは、そのような手間を省くためにSuicaの利用は交通費に限定してもよいでしょう。
まとめ
Suicaを利用して交通費の支払いをした際の経理上の注意点について説明しました。
Suicaをはじめとする交通系ICカードは現在色々な場面で利用することができ非常に便利です。
経理事務を行う上でも、うまく活用することができれば効率化を図ることができます。
事業用のSuicaを用意する、交通費の支払い以外には使用しないようにすると、会計資料の保管の手間が省けたり、会計ソフトとのデータ連携がしやすくなり、効率化を図ることができます。
メリットがたくさんあるのでぜひ導入してみましょう。
経理事務の効率化に興味がある方はぜひ弊所までお問い合わせください。