モノやサービスを購入してから代金を支払うまでの期間の長さのことを「支払サイト」といいます。支払サイトは、会社の資金繰りに大きな影響を与えます。特に売上代金の回収と経費の支払のタイミングがズレてしまうと、余計に多くの資金が必要となってしまいます。資金繰りを安定させるためには自社の支払サイトの長さについて目を配る必要があります。
この記事では支払サイトについて経営者の方が知っておくべき知識を説明しています。
支払サイトの定義と重要性
支払サイトとは、取引において商品やサービスが提供されてから、代金が支払われるまでの期間を指します。この期間は、取引先間で合意された支払い条件に基づいて決定されます。支払サイトは、取引において非常に重要な要素であり、会社の資金繰りに大きな影響を与えます。特に売り手側からすると代金を回収するための期間のため、「回収サイト」とも呼ばれます。
例えば、ある小売店が7月31日に卸業者から100万円分の商品を仕入れたとします。この取引の代金の支払い期限は8月31日です。この場合、支払サイトは30日となります。
8月31日までに小売店は仕入れた商品を販売し代金を回収できれば、販売代金の一部を使い、卸業者に対して100万円を支払うことができます。しかし、8月中に代金を回収できない場合には別途資金を用意して卸業者に代金を支払わなければいけません。そのため、販売代金を回収するまでの間の資金が追加で必要となります。
このように、支払サイトは会社の資金繰りに大きな影響を与えるため 経営者の方々は自社の支払サイトについてよく知っておく必要があります。
支払サイトの一般的な長さ
支払サイトの長さは一般的には30日が多いです。つまり、ある会社が商品を仕入れた後、30日以内に代金を支払うことになっている場合、その企業の支払サイトは「30日サイト」と呼ばれます。「30日サイト」は「月末締め翌月未払い」とも呼ばれます。
支払サイトは、取引の性質や業界の慣行に応じてさまざまな種類があります。「30日サイト」のほかに、取引日から60日以内に支払いが行われる「60日サイト」や取引日から90日以内に支払いが行われる「90日サイト」も一般的です。
※参考 下請事業者には60日以内に支払をしなければいけない
下請代金支払遅延等防止法に基づき、親事業者は下請事業者に対して、取引成立日または納品日から60日以内に代金を支払う義務があります。この規定は、下請事業者の資金繰りを保護するために設けられています。違反した場合には親事業者には罰則が科される可能性があります。
支払サイトについての基本的な考え方
支払サイトは、売り手側と買い手側の双方にとって重要な取引条件であり、それぞれの立場から異なる視点で考慮されます。
売り手側の考え方
売り手側にとって、売上の代金を早く回収できれば、運転資金に早期に充てることができ、会社の資金繰りが安定します。したがって、売り手側はできるだけ短い支払サイトを望む傾向があります。特に資金力が小さい企業や、設立当初の会社にとっては、支払サイトの長さが経営に与える影響は大きく、取引先との交渉において重要なポイントとなります。
買い手側の考え方
買い手側にとっては、支払サイトが長いほど、資金繰りに余裕が生まれます。長期間の支払サイトを設定することで、支払期限まで猶予ができるので販売代金を回収してから支払いを行うことが可能となります。特に金額の大きな取引を行う会社にとって、支払サイトの長さは資金繰りの安定を高める重要な要素となります。しかし、支払サイトを長く設定しすぎると、売り手との関係が悪化するリスクもあるため、バランスが求められます。
このように、支払サイトは売り手と買い手双方の立場から、資金繰りに大きな影響を与えるため、慎重に設定されるべきです。
支払サイトを見直して資金繰りを改善する方法
資金繰りを改善するためには、支払サイトの見直しが必要となります。見直しの方法は二つの方法があります。
- 取引相手との交渉
支払サイトの見直しには、取引の相手方との交渉が不可欠となります。 しかし、支払サイトの見直しは、取引の相手方にとってはキャッシュフローの悪化を招くため利害が対立しています。そのため、基本的には見直しの難易度は非常に高いです。そのため、交渉に当たっては相手側が納得できるように代金を早期に支払う場合には一定額を割り引く等の交換条件を提示することが重要です。
- ファクタリングの活用
ファクタリングとは、業者が売掛債権を買い取ってくれるサービスです。 売掛金の支払い期日より前に現金化できます。ただし、主に取引先の信用力によってはサービスを受けられないこともあります。 また、手数料が発生するため受取れる代金が目減りします。
- 代金回収に問題のある相手先への対応
取引先の中には、契約通りの期限までに代金を回収できない方もいます。それが原因で自社の資金繰りが悪化している可能性があるので、回収漏れや回収遅滞がないよう代金回収業務を強化しましょう。
支払サイトをこれ以上見直しできない場合には
支払サイトの見直しは、主に取引の相手先との交渉となるため、思うような結果が出ないことも多いです。その場合には金融機関からの資金調達を考えてみましょう。
いったん資金繰りに困ってしまうと、経営者の頭の中が資金繰りのことで一杯になってしまい、 他のことは何もできなくなってしまいます。 資金調達により手元資金に余裕ができれば、資金繰りを抜本的に改善する方法を考える時間的余裕ができます。
まとめ
支払サイトについて説明しました。
支払サイトとは、取引後に代金が支払われるまでの期間を指し、会社の資金繰りに大きく影響します。一般的には30日、60日、90日の支払サイトが主流で、業界や取引条件により異なります。売り手は早期の資金回収を望み短い期間を求め、買い手は資金繰りの余裕を確保するために長い期間を好みます。そのため支払サイトを改善するためには、取引先との交渉が必要不可欠となります。まずは、自社の支払サイトがどうなっているのか確認してみましょう。