企業にとって利益を上げ続けることは存続のための必須条件です。
単に売上を伸ばすだけでは十分とは言えません。
しっかりと利益を生んでいるかどうかこそが、
企業の将来を判断する重要な指標となります。
そこで今回は、経営者にとって欠かせない収益性分析について、
深く掘り下げて解説します。
売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率、売上高当期純利益率、
総資本利益率、株主資本利益率といった主要な指標の紹介から、
具体的な計算方法まで詳細に説明します。
収益性分析とは何か?
収益性分析とは、企業がどれほど効率的に利益を上げているかを分析する手法です。
貸借対照表と損益計算書の数値を用いて、様々な指標を算出することで、
企業の収益性を判断することができます。
収益性分析を行うことで得られる主なメリットは以下の通りです。
- 企業の健全性を判断できる
- 経営課題を特定できる
- 改善策を立案できる
- 株主や金融機関への説明資料として活用できる
収益性分析指標とその計算方法
収益性分析には、様々な指標が用いられます。
ここでは6つの指標とその計算方法を説明します。
売上高総利益率
売上高総利益率は、売上高から売上原価を差し引いた売上高総利益の割合です。
一般的に粗利率とも呼ばれ、製品やサービス自体がどれだけの利益を創出しているかを評価します。
計算式
売上高総利益率 = 売上高総利益 ÷ 売上高 × 100
分析ポイント
- 同業他社と比較することで、自社の製品やサービスの競争力を見極めることができる。
- 原価管理の効率性を評価する指標として有効である。
売上高営業利益率
売上高営業利益率は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を
差し引いた営業利益の割合です。
主たる事業活動によってどれだけの利益を創出しているかを評価します。
計算式
売上高営業利益率 =営業利益 ÷ 売上高 × 100
分析ポイント
- 営業活動の効率性を評価する指標として有効である。
- 販売戦略や販管費の管理状況を分析するのに役立つ。
売上高経常利益率
売上高経常利益率は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費、
営業外収益及び営業外費用を差し引いた経常利益の割合を表す指標です。
本業以外の事業活動の影響も考慮した企業全体の通常の事業活動により
どれだけ利益をあげているかを評価します。
計算式
売上高経常利益率 =経常利益 ÷ 売上高 × 100
分析ポイント
- 企業全体の収益性を評価する指標として有効である。
- 偶発的な収益や費用の影響を除いた、本来の事業活動の収益性を把握できる。
売上高当期純利益率
売上高当期純利益率は、売上高からすべての費用を差し引いた当期純利益の割合を表す指標です。
最終的な利益率として、通常の事業活動に加えて、臨時収入や臨時損失の影響も
考慮した企業がどれだけの純粋な利益を上げているかを評価します。
計算式
売上高当期純利益率 = 当期純利益 ÷ 売上高 × 100
分析ポイント
- 企業の最終的な収益性を評価する指標として有効である。
- 株主や金融機関にとって、企業の投資魅力を判断する重要な指標となる。
総資本利益率 (ROA)
総資本利益率 (ROA) は、総資本(貸借対照表の資産のこと)で稼いだ利益の割合を表す指標です。
企業が投入した資本をどれだけ効率的に運用して利益を上げているかを評価します。
計算式
総資本利益率 (ROA) = 当期純利益 ÷ 総資本 × 100
分析ポイント
- 企業全体の資本運用効率を評価する指標として有効である。
- 異なる業種間の収益性を比較する際に役立つ。
株主資本利益率 (ROE)
株主資本利益率 (ROE) は、株主資本(貸借対照表の純資産のこと)で稼いだ利益の割合を表す指標です。
株主にとってどれだけ利益を還元しているかを評価します。
計算式
株主資本利益率 (ROE) = 当期純利益 ÷ 株主資本 × 100
分析ポイント
- 株主にとっての企業の魅力を評価する指標として有効である。
- 経営陣の株主への責任を果たしているかどうかを判断するのに役立つ。
収益性分析の具体的な計算例
ここでは、具体的な数値例をつかって収益性分析の指標を計算してみます。
例:株式会社サンプルの収益性分析
株式会社サンプルの貸借対照表と損益計算書を用いて、各指標の計算例を以下に示します。
売上高総利益率
400万円 / 1,000万円 × 100 = 40%
売上高営業利益率
200万円 / 1,000万円 × 100 = 20%
売上高経常利益率
220万円 / 1,000万円 × 100 = 22%
売上高当期純利益率
170万円 / 1,000万円 × 100 = 17%
総資本利益率 (ROA)
170万円 / 2,000万円 × 100 = 8.5%
株主資本利益率 (ROE)
170万円 / 1,500万円 × 100 = 11.3%
収益性分析の活用方法
過去を振り返り、現在を分析し、未来を予測する。
この三つの視点から収益性を深く掘り下げることで、利益の源泉を明らかにし、
持続的な成長戦略を立案することができます。
1. 過去の推移と比較分析:成長の軌跡を解き明かす
収益性分析指標を過去数年間遡って分析します。
時間軸に沿って指標の推移を確認することで、
企業の成長トレンドや課題を明確に把握することができます。
2. 業界平均や同業他社と比較分析:競争優位性を鮮明にする
自社の収益性を、業界全体や同業他社の平均値と比較することで、
自社の強みや弱みを客観的に評価することができます。
競合企業との差別化ポイントを明確にし、競争優位性を確立するための
戦略を策定することができます。
3. 部門別・商品別分析:利益の源泉を特定する
部門ごと、商品ごとに収益性を分析することで、利益を生まれている部門や商品、
逆に改善が必要な部門や商品を特定することができます。
利益の源泉に焦点を絞り、効率的な資源配分を実現することで、
企業全体の収益性を向上させることができます。
4. 経営戦略の立案:未来への羅針盤を描く
上記の分析結果に基づき、将来の成長に向けた具体的な経営戦略を立案することができます。
投資計画、マーケティング戦略、コスト削減策など、事業全体の戦略を
収益性という視点から最適化することができます。
まとめ
収益性分析について説明しました。
収益性分析は、以下の指標を見ることで企業が効率的に利益を上げているかを分析します。
売上高総利益率
売上高営業利益率
売上高経常利益率
総資本利益率
株主資本利益率
各指標は、利益率が高いほど、効率的に利益を上げ、
販管費や金利負担が高いと、利益率が下がります。
自社の過去の指標、業界平均、同業他社と比較することで、
自社の立ち位置がわかり経営計画の策定や経営改善に役立てることができます。
今回紹介した内容を参考に自社の収益性分析を積極的に活用したいとお考えの方は
ぜひ弊所までご相談ください。