はじめに|がむしゃらに売っても黒字にはならない?
「今月も売上はそこそこあった。
でも、通帳の残高を見て、正直ちょっと焦っている——。」
そんな経験はありませんか?

起業して3年、5年と経つ中で、
営業にも慣れ、売上も増えてきた。
けれど、思ったほど利益が出ていない。
その理由が自分でもよく分からない。
実はこの状態、がんばって売ってるのに“経営が苦しい”会社に共通する落とし穴です。
その答えを教えてくれるのが、
今回ご紹介する「損益分岐点」という考え方。
難しそうに聞こえるかもしれませんが、
ポイントさえ押さえれば、誰でも今すぐに実践できるシンプルな指標です。
「いくら売れば、ウチは黒字になるのか?」
それを数字で“見える化”できれば、会社のかじ取りはぐっと楽になります。
この記事では、損益分岐点の超カンタンな求め方から、実際の活用例までをやさしく解説します。
数字が苦手な社長でも読めるように構成していますので、ぜひ最後までご覧ください。
「損益分岐点」ってそもそも何?
▶ 損益分岐点=“儲けゼロ”のライン

損益分岐点とは、「売上が、かかった経費とちょうど同じになるライン」のこと。
このラインを境に、会社の利益はこう変わります:
- 売上が損益分岐点より下回っている → 赤字
- 売上が損益分岐点と同じ → プラスマイナスゼロ
- 売上が損益分岐点を超える → 黒字(利益が出る)
言い換えれば、損益分岐点とは、「会社が赤字から黒字に変わる境界線」です。
▶「これ以上売らなければ赤字です」という事実を教えてくれる
たとえば、月100万円の売上があっても、
原価・人件費・家賃などの経費で100万円かかっていれば、手元には1円も残りません。
これが「損益分岐点ピッタリ」の状態です。
つまり、売上の金額だけを見ても、会社が儲かっているかどうかはわからない。
利益が出るかどうかは、損益分岐点を超えているかどうかで決まるのです。
▶ 起業初期こそ「損益分岐点」を武器にすべき理由
起業初期の企業は、資金も人も余裕がありません。
だからこそ、「どこが損益分岐点なのか」を知ることで、無駄な仕事・儲からない仕事を減らし、限られた時間とリソースを“黒字に直結する行動”に集中することができます。
また、損益分岐点が分かっていれば、次のような判断にも迷いがなくなります。
- 「この仕事、受けるべきか?」
- 「人を雇っていいタイミングか?」
- 「今、値上げをしても大丈夫か?」
つまり損益分岐点は、経営のあらゆる意思決定の“土台”になる数字なのです。
このように、損益分岐点はただの計算式ではなく、
経営者が「判断ミスで赤字に陥るのを防ぐための数字」といえます。
次のセクションでは、実際にこの損益分岐点を「どうやって求めるのか?」をカンタンにご紹介します。
ステップ1|まずは「固定費」と「変動費」に分けよう
損益分岐点を出すには、まず費用を2種類に分けます。
▶ 固定費:売上に関係なく毎月かかる費用

- 事務所の家賃
- 社員や役員の給料
- サブスクや通信費
- 保険料など
売上ゼロでも発生するのが固定費です。
▶ 変動費:売上に応じて増減する費用

- 材料費
- 商品の仕入費用
- 外注費
たとえば、仕事を受けたときだけ発生する外注費などが該当します。
ステップ2|「粗利率」を出そう
次に必要なのが「粗利率」。
これは、売上から変動費を引いた「粗利」が、売上の中でどれくらいを占めるかという割合です。
▶ 粗利率=(売上-変動費)÷ 売上
たとえば:
- 月の売上:100万円
- 変動費:40万円
- 粗利=60万円 → 粗利率60%
この「粗利率」は、ビジネスモデルの“体質”を示す数字です。
ステップ3|損益分岐点を計算してみよう
いよいよ本題。
▶ 損益分岐点の売上=固定費 ÷ 粗利率
例として:
- 固定費=月50万円
- 粗利率=60%
なら、損益分岐点は…
50万円 ÷ 60%=約83万円
つまり、月に83万円以上の売上がなければ赤字になるというわけです。
「売上100万あってもギリギリだった理由」がここで見えてきます。
「目指す売上」と「黒字になる売上」は違う
意外と多くの経営者がやってしまいがちなのが、「とりあえず売上1,000万を目指そう!」という目標設定。
でも、目標は「かっこいい数字」で決めるものではありません。
損益分岐点という現実の数字を知ることで、“生き残るための最低ライン”が見えるようになります。
損益分岐点を経営に活かす3つのポイント
▶ ①「月次で見える化」する

Excelやクラウド会計を使って、
売上、変動費、固定費、粗利率、損益分岐点を毎月チェック。
テンプレでも十分です。
▶ ②「売上目標」を損益分岐点+αで設定する

黒字になるギリギリのラインでは不安定です。
利益を出すには、損益分岐点+目標利益まで売上を伸ばす必要があります。
例)
損益分岐点:月80万円
目標利益:月20万円
→ 売上目標:月100万円
▶ ③ 値決め・外注の見直しにも活用できる

粗利率が低いなら:
- 値上げ検討
- 原価交渉
- 外注比率の見直し
など、経営の改善アクションが見えてきます。
まとめ|数字を「味方」にすれば、経営はもっと楽になる
損益分岐点を知ることは、「数字の見える化」とも言えます。
数字が苦手でも大丈夫。
必要なのは、ほんの少しの“見える化”と、そこからのアクションです。
最後に|数字に強い経営者になる最初の一歩
「なんとなく感覚でやってきた」から、「数字で判断できる社長」へ。
それが、起業5年以内の社長にとって大きな差を生みます。
損益分岐点を知ることは、会社の未来を守る力になります。
もし「自分ひとりでは難しい」と感じるなら、数字の見える化をサポートするササキ税理士との月次ミーティングもご活用ください。