会社の口座残高を見つめながら、「そろそろ融資を申し込むべきか」と考えたとき、
多くの経営者様が最初に突き当たるのが金額の壁です。
手元に資金をしっかり残して安心したい気持ちがある一方で、
必要以上に借りてしまって後々の返済に追われるのは避けたいものですよね。
かといって、遠慮して少なめに借りた結果、数ヶ月後にまた資金繰りに頭を悩ませるような事態も、
できれば起こしたくないものです。
実は、融資で失敗しないための第一歩は、多く借りることでも、
少なく抑えることでもありません。
自社にとっての適正な金額の基準を知ることにあります。
この記事では、本業が忙しくて普段は数字の管理まで手が回らないという経営者様に向けて、
借りすぎや借り不足を防ぐための融資金額の決め方を分かりやすく解説します。
自社にぴったりの金額を見つけるためのヒントとして、
ぜひ参考にしていただければ幸いです。
借入金額をなんとなく決めると危険な理由
ビジネスを大きく動かしていく中で、まとまった資金が必要になる場面は必ず訪れます。
その際、融資の金額を「だいたいこれくらいあれば足りるだろう」という感覚や、
キリの良い数字で決めてしまうケースは少なくありません。
しかし、根拠を持たずに融資金額を決めてしまうことには、実は大きなリスクが潜んでいます。
ここでは、なんとなくの金額設定が会社にどのような影響を与えるのかを詳しく見ていきましょう。

「多めに借りれば安心」と考えるリスク
融資を受ける際、多くの経営者様が
「足りなくなったら困るから、借りられるだけ多めに借りておこう」と考えがちです。
手元にたくさんのお金があれば、確かに心理的な安心感は得られるかもしれません。
しかし、融資はあくまで「将来返さなければいけないお金」です。
必要以上に多く借りてしまうと、その分だけ毎月の返済額が大きくなります。
また、借りたお金には当然ながら利息が発生します。
使わずにただ口座に眠らせているだけのお金に対しても利息を支払い続けることになるため、
結果として会社の大切な利益を削ってしまうのです。
さらに、人間心理として
「手元にお金があると、つい気が緩んで予定外の支出をしてしまう」
というリスクもあります。本当に必要な投資ではなく、
今すぐ急ぎではない経費に使ってしまい、
気づいた時には返済負担だけが重くのしかかっていた、
という状況は避けたいところです。
「少なめに借りれば安全」と考えるリスク
一方で、コンプライアンス意識が高く、誠実な経営者様ほど
「借金はできるだけ少なく抑えたい」
「少なめに借りるほうが安全だ」
と考えがちです。
余計な借入をしない姿勢は素晴らしいのですが、
融資においてはこれが逆効果になることもあります。
一番のリスクは、事業が軌道に乗る前に資金がショートしてしまうことです。
例えば、新しい設備を導入したり、新サービスを立ち上げたりする場合、
事前の予想よりも売上が立つまでに時間がかかることは珍しくありません。
その際、ギリギリの金額しか借りていないと、数ヶ月で手元資金が底をついてしまいます。
足りなくなったらまた追加で借りればいいと思われるかもしれませんが、
金融機関からすると、融資を受けてすぐに「またお金が足りなくなりました」
と相談されるのは、あまり良い印象ではありません。
見通しが甘い経営計画だったのではないかと判断され、
追加の融資がスムーズにおりない可能性が高くなってしまいます。
結果として、最も資金が必要なタイミングで動けなくなってしまうリスクがあるのです。
返済額を考えずに借りると資金繰りが苦しくなる
融資を受ける際、私たちは「いくら借りられるか」という入り口の数字に目を奪われがちです。
しかし、本当に大切なのは「毎月いくら返していくか」という出口の数字です。
自社の今の収益力で、毎月どれくらいの返済なら無理なく続けられるのかを
検証せずに借りてしまうと、後から資金繰りが急激に悪化します。
売上は順調に上がっているのに、なぜか毎月末の口座残高が減っていく
という状態に陥る原因の多くは、この返済負担のミスマッチにあります。
利益の中から無理なく返済できる金額をあらかじめ把握しておかないと、
本業がどれだけ忙しくても、常に資金繰りの不安が頭をよぎるようになってしまいます。
融資金額は感覚ではなく、数字で決める必要がある
このように、多く借りすぎても、少なく借りすぎても、
会社を維持していく上での足かせになってしまいます。
つまり、融資金額を決める際に「なんとなく」や「感覚」を
頼りにするのは非常に危険だということです。
創業から数年が経ち、年商が数千万円規模に成長してくると、
動くお金の額も大きくなります。
だからこそ、経営者様の直感だけでなく、過去の実績やこれからの計画
といった具体的な数字に基づいて、最適な金額を算出することが求められます。
次の章では、実務や数字管理が少し苦手という経営者様でも、
自社にとっての適正な借入金額をスムーズに見つけられる具体的な手順について、
分かりやすく解説していきます。
適正な借入金額を決める3つのステップ
融資の金額をなんとなくで決めるのが危険であることは分かっても、
「じゃあ、具体的にどうやって決めたらいいのだろう」と悩んでしまいますよね。
特に日々の本業でお忙しい経営者様にとって、
複雑な計算や細かい書類の手続きはできるだけ避けたいものだと思います。
そこで、実務や数字の管理が少し苦手という方でも、
自社にぴったりの適正金額を導き出せる3つのステップをご紹介します。
難しい算式は使いませんので、ぜひ自社の状況を思い浮かべながら、
一緒に確認していきましょう。

ステップ1:何にいくら必要かを洗い出す
最初のステップは、今回のお金が「何のために」「いくら必要なのか」
を具体的に書き出すことです。
融資を申し込む際、金融機関からは必ず使い道を尋ねられます。
このとき、「なんとなく手元を厚くしたいから」という理由だけでは、
金融機関もいくら貸せばいいのか判断ができません。
まずは、必要となる金額の根拠を明確にすることが大切です。
ここで重要なのが、必要となる資金を
「運転資金」
「設備資金」
の2つに分けて考えるという点です。
この2つは性質が全く異なるため、
混ざってしまうと計算がずれてしまう原因になります。
運転資金とは、日々のビジネスで仕入れてから売上が入るまでの
「ズレ」を埋めるためのお金です。
例えば、商品の仕入れ代金、従業員への給与、オフィスの家賃、
広告宣伝費などがこれに当たります。
一方で設備資金とは、新しく店舗を出したり、パソコンや機械を購入したり、
業務用のシステムを導入したりするための、一回限りのまとまった投資のお金です。
まずは、これから数ヶ月の間に、運転資金としていくら必要なのか、
また設備投資としていくら必要なのかを、見積書などを参考にしながら
ノートやパソコンに書き出してみることから始めましょう。
月商の何ヶ月分という目安だけに頼らない
よくビジネス書などでは、「運転資金の目安は月商の3ヶ月分」
といった書かれ方をすることがあります。
年商が3,000万円の会社であれば、月商は約250万円ですので、
その3ヶ月分にあたる750万円が目安になる、という計算です。
確かにこれは一つの分かりやすい基準ではありますが、
この目安だけに頼り切ってしまうのは少し注意が必要です。
なぜなら、ビジネスの形によって、お金が出ていくタイミングと
入ってくるタイミングは全く異なるからです。
例えば、現金商売の飲食店であれば、売上がその日のうちに入ってくるため、
手元の現金が枯渇しにくく、それほど多くの運転資金は必要ないかもしれません。
しかし、企業間取引が多い卸売業や建設業などでは、
仕事を終えてから実際にお金が振り込まれるまでに2ヶ月程度かかることも珍しくありません。
このように、自社の入金と支払いのサイクル(資金繰りの波)によって、
本当に必要な金額は変わります。
一般論の目安は参考にしつつも、やはり自社の実際の動きを見ることが大切です。
ステップ2:毎月いくら返済できるかを確認する
何にいくら必要かが分かったら、次は「毎月いくらなら無理なく返済できるか」を確認します。
借りる金額を決める上で、ここが最も大切なポイントになります。
融資を受けた後、毎月の返済は「会社の利益」から支払っていくことになります。
時々、「売上が増えているから大丈夫」と考えてしまう方がいらっしゃいますが、
売上がいくら多くても、手元に残る利益が少なければ返済は苦しくなってしまいます。
無理のない返済額を知るためのシンプルな基準は、
「現在の月々の利益(税金などを差し引いた後の純利益)」に「減価償却費」を足した金額です。
減価償却費とは、過去に購入した設備などの費用を何年かに分けて計上しているもので、
実際には今月のお金が出ていかない費用です。
そのため、この2つを足した金額が、会社が1ヶ月の間に自力で生み出せる
「返済に回せるお金の最大値」ということになります。
この最大値の範囲内で毎月の返済額が収まるような借入金額を設定するのが、
経営を安全に保つための秘訣です。
もし、必要だからといってこの範囲を超える返済額の融資を受けてしまうと、
毎月のように手元の現金が減っていくことになり、非常に危険です。
ステップ3:借入後の資金繰りをシミュレーションする
最後のステップは、実際に融資を受けた後の、会社の資金繰りを予測してみることです。
例えば、現在の手元資金が150万円だとして、そこに500万円の融資が入ったとします。
口座残高は一時的に650万円に増えますが、そこからステップ1で洗い出した設備投資の支払いや、
毎月の返済が始まります。
ここで行いたいのは、「数ヶ月後、あるいは1年後に、口座の残高がどうなっているか」の予測です。
できれば、売上が計画通りにいった場合のパターンだけでなく、
少し売上が落ち込んでしまった場合のパターンも用意しておくのがおすすめです。
もし、少し売上が下がったシミュレーションをしたときに、
半年後に口座残高がマイナスになってしまうようであれば、
それは「借りる金額が少なすぎる」か、「返済期間が短すぎて毎月の負担が重すぎる」
のどちらかである可能性が高いです。
その場合は、融資の金額を少し増やすか、返済の期間を長く設定できないか、
金融機関と交渉する余地が生まれます。
経営者としての正しい判断基準を持つ
ここまで3つのステップを見てきましたが、これらを行う最大のメリットは、
経営者様ご自身が「我が社はこの金額が最適です」と、
自信を持って周りに説明できるようになることです。
金融機関の担当者様も、ただ「お金が必要だから貸してください」と言われるより、
「これこれの理由でこれだけの資金が必要で、毎月の利益からこのように返済していきます」
と数字で説明されるほうが、圧倒的に安心してお金を貸しやすくなります。
それは、会社のコンプライアンスや信頼性を高めることにも直結します。
感覚ではなく、数字という客観的な事実に基づいて適正な金額を見極めること。
これが、融資で失敗しないために経営者様が持っておきたい、もっとも大切な判断基準です。

融資後に資金繰りを悪化させないためのポイント
無事に融資が決まり、会社の口座にまとまった資金が振り込まれると、
ホッと一安心される経営者様はとても多いです。
手元資金が厚くなることで、目の前の支払いや事業投資に対する不安が
和らぐのは間違いありません。
しかし、ここからが本当のスタートです。
融資を受けることはゴールではなく、そこから長い返済の旅が始まります。
せっかく調達した資金を有効に使い、会社をさらに成長させていくために、
融資を受けた後に押さえておきたい大切なポイントを解説します。

試算表で利益を確認する
融資を受けた後にまず意識したいのが、毎月の試算表をできるだけ早く確認することです。
日々の業務が忙しいと、どうしても領収書の整理や記帳が後回しになり、
決算の直前まで自社の正確な利益が分からないという状態になりがちです。
ですが、前述の通り、融資の返済は毎月の利益から行われます。
今月はどれくらいの利益が出ているのかをリアルタイムで把握できていないと、
気づかないうちに返済原資が足りなくなり、融資で借りたお金そのものを
取り崩して返済に充てるという悪循環に陥ってしまいます。
毎月、通帳の残高を見るだけでなく、試算表を通じて「いくら利益が残っているか」
を確かめる習慣をつけることが、健全な経営への第一歩です。
資金繰り表で将来の現金残高を確認する
試算表が「過去から現在までの業績」を表すものだとすれば、
資金繰り表は「未来の現金の動き」を予測するものです。
特に年商が数千万円規模になってくると、売上の入金タイミングや
経費の支払期日が複雑に絡み合ってきます。
資金繰り表を使って、3ヶ月後や半年後にどれくらいのお金が残るのかを
予測しておくことで、「いつまでに、いくらの売上を回収しなければならないか」
が明確になります。
未来の数字が可視化されていれば、万が一、資金が減りそうな兆候があっても、
数ヶ月前の早い段階から手を打つことができるようになります。
早めに金融機関へ相談できる状態を作る
経営を行っていれば、どうしても計画通りにいかない時期や、
予期せぬ出費が重なる時期もあります。もし資金繰りに不安を感じたときは、
できるだけ早く金融機関に相談することが大切です。
金融機関は、お金が完全に底をついてから相談されるよりも、
数ヶ月前に「少し見通しが厳しくなりそうなので、事前に相談させてください」
と言われるほうが、真摯に対応してくれやすい傾向があります。
日頃から試算表や資金繰り表を整えておけば、金融機関に対しても現状を正直に、
かつ分かりやすく説明できるため、返済条件の変更(リスケジュール)や追加融資などの
相談もスムーズに進みやすくなります。
税理士と一緒に数字を確認することで、判断ミスを防ぎやすくなる
とはいえ、経営者様がお一人で日々の本業をこなしながら、
試算表を読み解き、先の資金繰り表まで作成するのは時間的
にも精神的にも大きな負担ですよね。
そこでおすすめしたいのが、税理士を単なる確定申告の代行業者としてではなく、
経営の意思決定を支える「アドバイザー」として活用することです。
定期的に税理士と面談し、一緒に数字をチェックする時間を設けることで、
経営者様が感覚で捉えていた会社の現状を、客観的なデータとして整理することができます。
「今の利益なら、これくらいの投資は大丈夫ですよ」
「少し返済負担が重くなっているので、経費の見直しをしましょう」
といった具体的なアドバイスを受けることで、
孤独になりがちな経営の判断ミスを大幅に減らすことができます。
数字の管理をプロにサポートしてもらうことは、
会社のコンプライアンスを高めるだけでなく、経営者様が安心して本業に集中し、
事業をさらに加速させるための強力な武器になるのです。
まとめ
ここまで、中小企業が融資を受ける際の適切な借入金額の決め方について解説してきました。
融資の金額は、多ければ安心というわけでも、少なければ安全というわけでもありません。
大切なのは、何にいくら必要なのかという目的、毎月の利益から無理なく返せるかという返済能力、
そして数ヶ月先に現金がショートしないかという資金繰りの3つの視点から、
自社にとっての最適解を客観的な数字で判断することです。
また、融資を受けた後も、試算表や資金繰り表を使って会社の今の姿と未来の動きを
追い続けることが、事業を安定して成長させるための鍵となります。
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そうは言っても、日々の本業でお忙しい中で、
経営者様お一人が数字の管理や将来のシミュレーションまでこなすのは
決して簡単なことではありません。
当事務所では、単なる記帳の代行や確定申告だけでなく、経営者様の身近なパートナーとして、
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