家事按分とは?家事関連費を必要経費として正しく処理する方法の説明

家事按分とは?家事関連費を必要経費として正しく処理する方法の説明 税金

個人事業主が事業を行う場合には、自宅アパートを仕事場としていたり、
携帯電話を仕事とプライベートで兼用していたりといったことが多いと思います。
その場合に、それらにかかった費用のことを家事関連費といって
その一部を必要経費に計上することができ、所得税の負担を下げることができます。
家事関連費のうち、仕事で使った部分を計算することを家事按分といいます。
家事按分は、自分でその計算方法を決定しなければいけないため
間違ったやり方をすると後で税務調査で指摘されるリスクがあります。

この記事では家事関連費の家事按分について説明しています。

家事按分とは

家事按分とは、必要経費と生活費が混在している支出である家事関連費について
一定のルールにより必要経費と生活費を按分することです。

例えば、自宅アパートで仕事をしているフリーランスの方を考えてみましょう。

自宅アパートの家賃として月10万円を支払っているとします。
この家賃は、生活費であると同時に仕事を行うのに必要なものとなります。
必要経費として家賃である10万円を全額計上するのも、
全く計上しないのもどちらも実態を反映していないでしょう。
そこで、仕事場として使っている部分を、
全体の10万円から一定のルールにより「按分」計算をして
必要経費に計上することが認められています。

例えば、面積割合を使って按分計算することが考えられます。
仕事スペースとしてアパートの部屋全体の50%の面積を使っているとしたら

10万円 × 50% =5万円

を必要経費に計上することができます。

このような形で、家事関連費を一定のルールで必要経費と生活費に按分することを
家事按分といいます。

家事按分の対象となる経費の具体例と按分方法

家事按分の対象となる経費は、事業者の状況ごとに色々なケースが考えられます。
また、按分計算の方法については、税務署は具体的には示していません。
そのため、事業者自身が何が家事按分の対象となる経費になるのか、
そしてどのように按分するのか判断しなければいけません。
後で税務調査の際に指摘されないように
実際の状況を反映した処理を行う必要があります。

家事按分の対象となる家事関連費とその按分方法について
代表的なものとして以下のものがあります。

018 家事按分

家賃

自宅で仕事をしている場合の家賃が該当します。
家賃については、面積で按分することが多いです。

【例】

家賃 10万円

按分方法 面積 アパート80㎡のうち仕事スペース40㎡

必要経費 10万円 × 40㎡ ÷ 80㎡  = 5万円

光熱費

自宅で仕事をしている場合の光熱費が該当します。
電気料金、水道料金、ガス料金と区分して、
それぞれ実態に合わせて按分計算します。

光熱費は、使用時間や使用日数で按分することが多いです。

【例】

電気料金 3万円

按分方法 時間 一日のうち仕事で8時間使用

⇒ 

必要経費 3万円 × 8h ÷ 24h = 1万円

通信費

自宅で仕事をしている場合の固定電話やインターネット回線料金、
プライベートと仕事で兼用している携帯電話料金が該当します。

通信費は使用時間で按分することが多いです。

【例】

携帯電話料金 2万円

按分方法 使用時間 1日のうち、仕事で8時間、プライベートで8時間で合計16時間使用

必要経費 2万円 × 8h ÷ 16h = 1万円

自動車関連費用

車を仕事とプライベートで兼用している場合にその車にかかる費用全般が対象となります。
具体的には、

  • 車の購入費用
  • 駐車場賃料
  • ガソリン代
  • 自動車税
  • 自動車保険
  • 車検費用

等があります。

自動車関連費用は、使用日数や走行距離で按分することが多いです。

【例】

ガソリン代 2万円

按分方法 日数 平日の5日間は仕事で利用、土日の2日間はプライベートで使用

必要経費 2万円 × 5日 ÷ 7日 = 14285円

家事按分の2つの注意点

家事按分の方法は、明確なルールが定められていません。
そのため、自身で家事按分のルールを設定する必要があります。
あとで税務調査で指摘されやすい項目となりますので
以下の2つの点に注意しましょう。

必要経費であることがしっかりと説明できること

家事関連費は、生活費と混じるため、どうしても曖昧な部分が生じてしまいます。
なぜそれが必要経費なのか、按分方法は実態に即しているのかを
しっかり説明できるようにしましょう。

ポイントとしては以下の3つになります。

  • 業務を遂行する上で必要かどうか
  • 業務にかかった金額を区別できるかどうか
  • 根拠となる資料や利用履歴を残しておく

いったん採用した按分方法は継続して使う

いったん採用した按分方法は継続して使いましょう。
例えば、ある月のガソリン代の按分を利用日数で按分し、
次の月は走行距離で按分し、次の次の月は、また利用日数で按分する様に
コロコロと変更するのは利益調整をしていると判断される可能性あります。

補足 家事按分についての青色申告と白色申告の違い

家事按分について青色申告の場合と白色申告の場合では法令上、若干ニュアンスが違います。

青色申告の場合には、業務の遂行上直接必要であったことが取引の記録等に基づいて、
明らかにされる場合には家事関連費全体に占める割合に関係なく必要経費に計上できます。

白色申告の場合には、必要経費に計上できるのは業務の遂行上必要な経費が
家事関連費全体の50%を超えるものになります。
つまり、全体のうち50%以下しか必要経費に該当しないときには必要経費には
全く計上できなくなります。
ただし、業務の遂行上必要な部分が50%以下であっても、
必要な部分が明らかに区分することができる場合には必要経費に計上することができる
という但し書きがあります。
そのため、但し書きに従えば、しっかりと必要部分を区分すれば、
全体の50%以下であっても必要経費に計上することができるということになります。

したがって、家事按分については青色申告と白色申告のどちらでも取り扱いは
実質的には同じであるといえます。

まとめ

家事関連費の家事按分について説明しました。
個人事業主が事業を行うにあたり、生活費と必要経費が混じる家事関連費が発生してしまいます。
家事関連費は、家事按分によってその一部を必要経費として計上することができます。
しかし、その家事按分の方法は明確にルールとして示されていないので
後で税務調査で指摘されないように、

  • 業務を遂行する上で必要かどうか
  • 業務にかかった金額を区別できるかどうか
  • 根拠となる資料や利用履歴を残しておく

というポイントを押さえてしっかりと処理しましょう。
家事按分について不安があるといった方はぜひ弊所までご相談ください。