いくら売れば黒字になる?中小企業の経営者が知るべき「損益分岐点」

051 アイキャッチ画像 会計

はじめに|がむしゃらに売っても黒字にはならない?

「今月も売上はそこそこあった。
でも、通帳の残高を見て、正直ちょっと焦っている——。」

そんな経験はありませんか?

051 がむしゃらに売っても黒字にならない

起業して3年、5年と経つ中で、
営業にも慣れ、売上も増えてきた。
けれど、思ったほど利益が出ていない。
その理由が自分でもよく分からない。

実はこの状態、がんばって売ってるのに“経営が苦しい”会社に共通する落とし穴です。

その答えを教えてくれるのが、
今回ご紹介する「損益分岐点」という考え方。

難しそうに聞こえるかもしれませんが、
ポイントさえ押さえれば、誰でも今すぐに実践できるシンプルな指標です。

「いくら売れば、ウチは黒字になるのか?」
それを数字で“見える化”できれば、会社のかじ取りはぐっと楽になります。

この記事では、損益分岐点の超カンタンな求め方から、実際の活用例までをやさしく解説します。
数字が苦手な社長でも読めるように構成していますので、ぜひ最後までご覧ください。


「損益分岐点」ってそもそも何?

▶ 損益分岐点=“儲けゼロ”のライン

051 損益分岐点

損益分岐点とは、「売上が、かかった経費とちょうど同じになるライン」のこと。
このラインを境に、会社の利益はこう変わります:

  • 売上が損益分岐点より下回っている → 赤字
  • 売上が損益分岐点と同じ → プラスマイナスゼロ
  • 売上が損益分岐点を超える → 黒字(利益が出る)

言い換えれば、損益分岐点とは、「会社が赤字から黒字に変わる境界線」です。


▶「これ以上売らなければ赤字です」という事実を教えてくれる

たとえば、月100万円の売上があっても、
原価・人件費・家賃などの経費で100万円かかっていれば、手元には1円も残りません。
これが「損益分岐点ピッタリ」の状態です。

つまり、売上の金額だけを見ても、会社が儲かっているかどうかはわからない。
利益が出るかどうかは、損益分岐点を超えているかどうかで決まるのです。


▶ 起業初期こそ「損益分岐点」を武器にすべき理由

起業初期の企業は、資金も人も余裕がありません。
だからこそ、「どこが損益分岐点なのか」を知ることで、無駄な仕事・儲からない仕事を減らし、限られた時間とリソースを“黒字に直結する行動”に集中することができます。

また、損益分岐点が分かっていれば、次のような判断にも迷いがなくなります。

  • 「この仕事、受けるべきか?」
  • 「人を雇っていいタイミングか?」
  • 「今、値上げをしても大丈夫か?」

つまり損益分岐点は、経営のあらゆる意思決定の“土台”になる数字なのです。


このように、損益分岐点はただの計算式ではなく、
経営者が「判断ミスで赤字に陥るのを防ぐための数字」といえます。

次のセクションでは、実際にこの損益分岐点を「どうやって求めるのか?」をカンタンにご紹介します。


ステップ1|まずは「固定費」と「変動費」に分けよう

損益分岐点を出すには、まず費用を2種類に分けます。

▶ 固定費:売上に関係なく毎月かかる費用

  • 事務所の家賃
  • 社員や役員の給料
  • サブスクや通信費
  • 保険料など

売上ゼロでも発生するのが固定費です。

▶ 変動費:売上に応じて増減する費用

052 商品の仕入れ
  • 材料費
  • 商品の仕入費用
  • 外注費

たとえば、仕事を受けたときだけ発生する外注費などが該当します。


ステップ2|「粗利率」を出そう

次に必要なのが「粗利率」。

これは、売上から変動費を引いた「粗利」が、売上の中でどれくらいを占めるかという割合です。

▶ 粗利率=(売上-変動費)÷ 売上

たとえば:

  • 月の売上:100万円
  • 変動費:40万円
  • 粗利=60万円 → 粗利率60%

この「粗利率」は、ビジネスモデルの“体質”を示す数字です。


ステップ3|損益分岐点を計算してみよう

いよいよ本題。

▶ 損益分岐点の売上=固定費 ÷ 粗利率

例として:

  • 固定費=月50万円
  • 粗利率=60%

なら、損益分岐点は…

50万円 ÷ 60%=約83万円

つまり、月に83万円以上の売上がなければ赤字になるというわけです。

「売上100万あってもギリギリだった理由」がここで見えてきます。


「目指す売上」と「黒字になる売上」は違う

意外と多くの経営者がやってしまいがちなのが、「とりあえず売上1,000万を目指そう!」という目標設定。

でも、目標は「かっこいい数字」で決めるものではありません。
損益分岐点という現実の数字を知ることで、“生き残るための最低ライン”が見えるようになります。


損益分岐点を経営に活かす3つのポイント

▶ ①「月次で見える化」する

051 数字の見える化

Excelやクラウド会計を使って、
売上、変動費、固定費、粗利率、損益分岐点を毎月チェック。
テンプレでも十分です。


▶ ②「売上目標」を損益分岐点+αで設定する

051 売上目標

黒字になるギリギリのラインでは不安定です。
利益を出すには、損益分岐点+目標利益まで売上を伸ばす必要があります。

例)
損益分岐点:月80万円
目標利益:月20万円
→ 売上目標:月100万円


▶ ③ 値決め・外注の見直しにも活用できる

051 値上げ検討

粗利率が低いなら:

  • 値上げ検討
  • 原価交渉
  • 外注比率の見直し

など、経営の改善アクションが見えてきます。


まとめ|数字を「味方」にすれば、経営はもっと楽になる

損益分岐点を知ることは、「数字の見える化」とも言えます。

数字が苦手でも大丈夫。
必要なのは、ほんの少しの“見える化”と、そこからのアクションです。


最後に|数字に強い経営者になる最初の一歩

「なんとなく感覚でやってきた」から、「数字で判断できる社長」へ。
それが、起業5年以内の社長にとって大きな差を生みます。

損益分岐点を知ることは、会社の未来を守る力になります。

もし「自分ひとりでは難しい」と感じるなら、数字の見える化をサポートするササキ税理士との月次ミーティングもご活用ください。